研究領域 −人と地盤環境の共生を礎とした社会基盤の創造−

地盤・水文環境は生命・社会の基盤として不可欠であり、人間活動との調和を図りながら持続可能な形で活用する必要があります。本分野では、人間活動に伴い排出される廃棄物を地盤材料に還元させたり地盤環境に受け入れる技術、汚染された地盤・水文環境を修復する技術、環境負荷の小さい社会基盤整備技術の開発を通して,地球環境と共生し経済・社会システムの変化に対応しうるインフラストラクチャ(社会基盤)の創造を図ります。
主な研究課題は以下の通りです。


地盤・水文環境を守る −土壌・地下水汚染の浄化・リスク評価−

工場跡地などにおける土壌・地下水汚染対策の実施にあたっては、地盤中における汚染物質の動態の把握,対策工法のメカニズムと信頼性の評価が重要となります。本分野では、室内実験、数値解析を通して、地盤中での重金属等の挙動評価と効果的な対策手法(遮水壁,吸着層工法など)の検討を行っています。さらに、環境リスク評価を導入して汚染サイトの環境影響,対策工の実施効果を定量的に評価し,リスクコミュニケーションへの貢献を図っています。



非水溶性汚染物質の浸透挙動評価 遮水工の遮水性能評価

主要な成果

Kato, T., Gathuka, L.W., Okada, T., Takai, A., Katsumi, T., Imoto, Y., Morimoto, K., Nishikata, M. and Yasutaka, T. (2021): Sorption-desorption column tests to evaluate the attenuation layer using soil amended with a stabilising agent, Soils and Foundations, Vol. 61, No. 4, pp. 1112-1122. 【論文はこちら】

Takai, A., Inui, T., and Katsumi, T. (2016): Evaluating the hydraulic barrier performance of soil-bentonite cutoff walls using the piezocone penetration test, Soils and Foundations, JGS, Vol.56, Issue 2, JGS, pp.277-290. 【論文はこちら】

木下 遥介, Yu ZHANG, 加藤 智大, Lincoln W. GATHUKA, 高井 敦史, 勝見 武(2021):鉛直荷重を受けたシート状吸着材のヒ素吸着性能評価,ジオシンセティックス論文集,Vol.36, pp.117-124. 【論文はこちら】


地球環境問題への貢献 −循環型社会の確立,気候変動への対応−

「持続可能な発展」に向けて社会経済システムの転換が求められる現在,資源の循環利用の推進,既存施設維持管理型の社会基盤整備への転換を図りながら,都市・地域の活性を持続させることが社会基盤整備の重要な課題になっています。さらに,地球温暖化に起因する気候変動は様々な地盤災害の原因となり人間生活の安全を脅かします。本分野では,産業活動から発生する廃棄物由来の資源を社会基盤整備に利用した場合の環境安全性の評価,環境負荷の小さい基礎構造物の建設・維持管理技術の提案などを通して,循環型社会の確立に貢献しつつ,気候変動による影響をも考慮した新しい社会基盤整備のあり方と適用技術を研究しています。



廃棄物再資源化材による地盤環境影響の概念 廃コンクリート再生資材の例

主要な成果

Ghaaowd, I., Takai, A., Katsumi, T., and McCartney, J.S. (2017): Pore water pressure prediction for undrained heating of soils, Environmental Geotechnics, ICE, Vol.4, No.2, pp.70-78.

Katsumi, T. (2015): Soil excavation and reclamation in civil engineering: Environmental aspects, Soil Science and Plant Nutrition, Taylor & Francis, Vol.61, No.S1, pp.21-29.

Katsumi, T. and Inui, T. (2013): Recycling materials in geotechnical applications, Third International Conference on Sustainable Construction Materials and Technologies - SCMT3 - Proceedings (on CD).

廃棄物の安全な処分 −廃棄物処分場の建設から跡地利用まで−

日々の暮らしや産業活動において,資源の再使用・再利用を図りながら廃棄物の排出を抑制し,廃棄物となったものについても循環資源としてリサイクルをすることが資源循環型社会の確立には必要です。しかし,技術やコスト面で資源化が困難な廃棄物については,廃棄物処分場に埋立処分し,可能な限り土地資源として利用することが妥当なソリューションといえます。本分野では,処分場を建設するための建設材料と構造の評価,建設・維持管理手法の開発,処分場内部における有害物質の動態,跡地利用に伴う環境リスクの評価・管理手法の体系化といった研究を行い,廃棄物処分場の建設から跡地利用までの一連のプロセスを通しての地盤環境の保全を図ります。



不同沈下に対する粘土ライナーの挙動評価 処分場跡地利用時の環境リスク

主要な成果

乾 徹・Li Yuelei・勝見 武・高井敦史・佐藤一貴 (2016):ゼオライト添加したジオシンセティッククレイライナーの遮水性とセシウム吸着性能の評価,ジオシンセティックス論文集,Vol.31,pp.85-91.

Katsumi, T., Inui, T., Takai, A., Oshima, H., and Flores, G. (2015): Geotechnics for land use at coastal landfills, Proceedings of the XVI ESCMGE - Geotechnical Engineering for Infrastructure and Development, ICE Publishing, pp.2711-2716.

Nguyen, L.C., Inui, T., Ikeda, K., and Katsumi, T. (2015): Aging effects on the mechanical property of waste mixtures in coastal landfill sites, Soils and Foundations, JGS, Vol.55, Issue 6, pp.1441-1453.


巨大災害からの復旧復興への貢献 ―災害廃棄物の再資源化と放射性物質含有廃棄物の合理的な処分―

東日本大震災では,地震動ならびに津波の波力により甚大な被害をもたらしました。災害廃棄物等の適切な処理と再資源化,除染等に伴い発生した放射性物質を含む土壌・廃棄物の適切な処分は,人類が直面した新たな地盤環境課題であり,その解決に向けて現在もなお活発に議論されています。当研究室では,ビッグデータを活用した災害廃棄物処理の実態評価と高度化,災害廃棄物分別土砂の地盤材料としての再資源化,放射性物質を含む土壌・廃棄物の処分技術の確立に関する検討を通じ,東北地方の都市再生と,将来的な巨大災害対応の一助となることを目指しています。



津波堆積物の堆積状況 災害廃棄物分別土砂を用いた盛土

主要な成果

清水 祐也, 塩入 潤一郎, 中川 将吾, 高井 敦史, 勝見 武 (2022):土砂混合廃棄物の分別特性に及ぼす含水比と細粒分含有率の影響の評価,地盤工学ジャーナル,Vol.17, No.3, pp.319-329. 【論文はこちら】

高井敦史,川島光博,勝見 武,乾 徹,岩下信一,大河原正文 (2016):東日本大震災で発生した岩手県の災害廃棄物分別土砂の品質とその変化,土木学会論文集C(地圏工学),Vol.72, No.3, pp.252-264. 【論文はこちら】

Inui, T., Yasutaka, T., Endo, K. and Katsumi, T. (2013): Geo-environmental issues induced by the 2011 off the Pacific Coast of Tohoku Earthquake and tsunami, Soils and Foundations, Vol.52, Issue 5, pp.856-871. 【論文はこちら】

高井敦史,保高徹生,遠藤和人,勝見 武,東日本大震災対応調査研究委員会地盤環境研究委員会(2013):東日本大震災における津波堆積物の分布特性と物理化学特性,地盤工学ジャーナル, Vol.8, No.3, pp.391-402. 【論文はこちら】

勝見教授(講演):「災害廃棄物再生資材の有効活用について」【こちらから視聴できます】