研究紹介

地盤・水文環境を守る,循環型社会の確立,巨大災害からの復旧復興への貢献

研究トピックス

地盤・水文環境は生命・社会の基盤として不可欠であり,人間活動との調和を図りながら持続可能な形で活用する必要があります。 本分野では,人間活動に伴い排出される廃棄物や副産物を地盤材料に還元させたり地盤環境に受け入れる技術,汚染された地盤・水文環境を修復する技術,環境負荷の小さい社会基盤整備技術の開発を通して,地球環境と共生し経済・社会システムの変化に対応しうるインフラストラクチャ(社会基盤)の創造を図ります。 主な研究課題は以下の通りです。研究設備学術論文受賞のリストもご覧ください。

テーマ一覧

建設発生土のリサイクルと自然由来重金属等

自然由来の重金属等を含む掘削土砂や岩石への対応は,環境地盤工学分野のホットトピックの1つです。 土や岩石に重金属等が含有されていることは特別なことではなく,日本ではヒ素の濃度が世界平均より高いなどの特徴があります。 これは,日本列島が大陸プレートと海洋プレートが押し合う境界にあって,特定の金属が融点等の関係で集まりやすいためと言われています。 重金属等は高濃度で濃集していれば鉱山として活用できる場合があり,温泉水にも重金属等が含まれるなど,私たちの暮らしに恵みをもたらすことがあります。 一方で重金属等を摂取することで,我々の健康に悪影響を及ぼすことが懸念されるため,溶出量基準などの環境基準が土壌汚染対策法で定められています。 自然由来の重金属等が基準を超える濃度で土や岩石に含まれる場合,掘削により空気や水に触れて酸化されることで重金属等が溶出するケースがありますが,ほとんどの場合は基準値をわずかに超えた濃度レベルであることが報告されています。 日本の国土は狭隘で土砂処分用地が限られること,自然由来の重金属等は比較的低濃度で分布することや,そもそも汚染物質を飲用または吸引しなければ健康被害は生じないこと,土は重要な資源であることなどを踏まえると,掘削土を周辺環境に配慮しながら地盤材料として有効活用することが望ましいと言えます。 本分野では,実際の建設プロジェクトで発生した土や岩石を採取してその溶出特性を調べたり,合理的な対策工として考えられる「吸着層工法」の施工方法の確立に向けた取り組みを進めています。

  • Zhang et al. (2026) Geotextiles and Geomembranes, 54(1), 1-13.【リンク】
  • Gathuka et al. (2022) Soils and Foundations, 62(3), 101130.【リンク】
  • Kato et al. (2021) Soils and Foundations, 61(4), 1112-1122.【リンク】
自然由来重金属等を含む掘削土の例 化学分析の例

地盤汚染の評価と対策

土壌汚染対策法の改正やリスクマネジメントに対する意識の向上から,土壌汚染の判明件数が増加しています。 土壌汚染への対策法として,対象汚染土を掘削して場外へ搬出する工法が多く採用されていますが,二次汚染防止の観点からも極力汚染土を動かさず適切に管理することが望ましいと言えます。 本分野では過去約20年にわたり,ベントナイトを原位置土に直接混合して構築するソイルベントナイト(SBM)鉛直遮水壁を対象に,封じ込め技術に関する研究を遮水性と変形追従性の観点から評価しています。

水と油の両方をはじく有機フッ素化合物類(PFASs)は有用な化学物質として幅広く使用されてきましたが,その後に人体への影響が明らかになり,地下水・土壌汚染への懸念が社会課題になっています。 先行研究で扱われていた化学物質とは異なり,疎水性と親水性の双方を発揮するPFASの地盤中での動態は十分には明らかなっていません。 本分野では,PFASと土の反応性の理解に向けた基礎的な吸着試験を実施しています。

  • Chen et al. (2024) Geotechnical Engineering Challenges to Meet Current and Emerging Needs of Society, 2862-2865. 【リンク】
  • Kato et al. (2025) Proceedings of Geo-EnvironMeet 2025, 100-105.【リンク】
  • 山本ら (2025) 土木学会論文集, 81(6), 00257.【リンク】
柔壁型透水試験装置 PFASのバッチ試験
 

廃棄物や副産物の適正管理・利用

廃棄物の適正な処理は社会活動を行う上で不可欠であり,最終処分先である廃棄物処分場の用地確保や環境安全性に配慮した運用が求められています。 本分野では,廃棄物処分場に敷設される遮水工や閉鎖後の処分場跡地に杭を打設する際の施工手法の提案など,地盤工学の見地から研究を行ってきました。 最近では処分場の残余年数が逼迫していることを踏まえ,処分場の長寿命化に向けた検討の一環で,中規模のカラムを用いた溶出試験を実施しました。

地震や津波,集中豪雨等の巨大災害が各地で多発しており,それに伴う災害廃棄物処理の合理化も重要課題です。発災後は,プラスチックや木くずなどの様々な廃棄物が混合されて仮置きされている場合が多く,分別を経て回収される土砂分にも,微細な不純物が多く混入しています。 木くずを含む土を地盤材料として再利用した場合,有機物の経時的な生分解により,地盤内に空隙が生じることで地盤としての安定性が損なわれる可能性が考えられることから,高い処理速度と処理精度を達成しうる処理方法の確立が必要です。 本分野では,大量に発生する災害廃棄物から復興資材となりうる土の適切な選別に向けて,処理前後の災害廃棄物の種類及び量を分類し分析して処理の実態を検証するなどの取り組みを進めています。 最近では,土の粒度分布や廃棄物の組成が処理効率に及ぼす影響について,室内実験と実機試験による検討も行いました。

  • Sarmah et al. (2024) Waste Management, 182(15), 32-41.【リンク】
  • Takai et al. (2023) Proceedings of the 9th International Congress on Environmental Geotechnics, 1, 3-10.【リンク】
  • Sumikura & Katsumi (2022) Journal of Material Cycles and Waste Management, 24(4), 1216-1227.【リンク】
廃棄物から溶出する化学物質を評価するカラム試験 災害廃棄物の例

地球環境問題への貢献

地中熱利用など,エネルギーと地盤工学の複合領域は重要なトピックの一つです。例えば,地下水・土壌中の熱輸送に関する研究は行われている一方で,地盤の温度が変化した際の環境安全性は十分には明らかになっていません。 本分野では,地盤と熱の相互作用が地中での化学物質の移行挙動に及ぼす影響の解明に向けて,従来の試験装置の改良を行い,実験・解析の双方のアプローチで研究を進めています。

最近では産業活動や建設プロジェクトを進める際に排出される副産物に注目し,これらの副産物を有効利用したカーボンニュートラルの実現に向けた技術開発にもチャレンジしています。

  • Yu et al. (2024) Geotechnical Engineering Challenges to Meet Current and Emerging Needs of Society, 2739-2744. 【リンク】
  • Kato et al. (2023) Soils and Foundations, 63(1), 101274.【リンク】
  • Sakr et al. (2022) Journal of Geotechnical and Geoenvironmental Engineering, 148(8), 04022061-1-13.【リンク】
温度変更型の柔壁型透水試験装置

キーワード

環境地盤工学 / 建設リサイクル / 土壌汚染 / 吸脱着 / エネルギー / 脱炭素 / 移流分散解析 / ベントナイト

研究に関連するトピックス